CAD/CAM冠(キャドカム冠)は、
保険でできる白い被せ物として広く使われるようになりました。
その一方で、当院には 「割れた」「外れた」「欠けた」「すり減ってしまった」
といったトラブルで来院される方が多くいらっしゃいます。
このページでは、CAD/CAM冠の特徴と限界、
「どんな場合に使うべきか」「どんな場合は避けたほうがいいか」を、
他の素材(ジルコニア・e.max・金属冠)
との比較も含めて総まとめしました。
【結論】CAD/CAM冠について最初に知っておいてほしいこと
- CAD/CAM冠はプラスチック(レジン)にセラミックの粉を混ぜたハイブリッド素材で、見た目は白くできますが、ジルコニアや金属冠ほどの強度はありません。
- 保険でできる範囲には制限があり、適応できる部位や条件が決まっています(保険のルール)。
- 特に奥歯・歯ぎしりが強い方・複数本連続して入っているケースでは、破損・脱離・摩耗などのトラブルが増えやすい傾向があります。
- 海外では「仮歯に近い位置づけ」として扱われることもあり、長期間の最終補綴としては慎重に考えるべき素材だと考えています。
- 金属アレルギーでどうしても金属を避けたい方に、保険内で選べる材料のひとつではありますが、
長期的にはジルコニアやe.maxなどの自由診療を含めて比較検討する価値があります。
【このページでわかること】
- CAD/CAM冠とは何か(材料・仕組み・保険適応)
- CAD/CAM冠が向いているケース/避けたほうがよいケース
- よくあるトラブル(割れた・外れた・すり減った・変色した)
- ジルコニア・e.max・金属冠との比較
- すでにCAD/CAM冠が壊れてしまったときの対応
- 当院内の関連ページ・症例解説へのリンク
CAD/CAM冠とは?保険でできる「白いプラスチックの被せ物」
CAD/CAM冠は、コンピューター制御で削り出して作るハイブリッドレジン冠です。
主成分はプラスチック(レジン)で、そこにセラミックの粉末を混ぜて固めたブロックから削り出します。
- 見た目:金属冠より白くできる
- 材質:強化レジン(ハイブリッドセラミック)
- 作り方:ブロックを機械で削って成形(CAD/CAM)
- 保険:条件を満たせば健康保険の対象
見た目だけ見るとセラミッククラウンに似ていますが、
実際には紙コップと陶器のマグカップくらいの差があると
イメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
CAD/CAM冠の保険適応と、その限界
CAD/CAM冠は、保険で使えるとはいえ「どの歯でもOK」ではありません。
保険のルールで、部位や噛み合わせなどに条件があります(詳細は診療時にご説明します)。
保険でCAD/CAM冠が使われる主なパターン
- 見える範囲の奥歯を、保険の範囲で白くしたい
- 金属アレルギーで、保険の非金属材料を使いたい
- 費用的に、自由診療のジルコニアまでは難しい
限界・注意点
- 材料の性質上、強い力にあまり向かない
- 肉厚(冠の厚み)が十分に取れないと、短期間で割れたり外れたりしやすい
- 長い期間使うと、摩耗や変色が出てくる傾向がある
- 多数の歯に一斉に使うと、全体が一気に崩れてくるケースもあり注意が必要
CAD/CAM冠で実際に多いトラブル
当院に転院される患者さんのケースでは、次のようなトラブルが目立ちます。
1. 割れた・欠けた・すり減った
- 噛む力が強い方(特に歯ぎしり)が使うと、短期間で破折・摩耗することが多い
- 隣接面(歯と歯の間)から欠けてくるケースが多い
2. 外れた・取れた
- 材質そのものがややたわみやすいため、接着面に負担がかかり脱離しやすい
- 金属の土台(メタルコア)の上にかぶせた場合、特に外れやすい傾向がある
3. 変色・汚れが目立つ
- プラスチック系の材料のため、長期間での着色・変色は避けられない
- 最初はきれいでも、数年単位で差が出てくる
こうした理由から、当院では
CAD/CAM冠を「長持ちする最終形」と考えるのは危険。
特に奥歯や歯ぎしりのある方では慎重に選択するようお話ししています。
CAD/CAM冠が向いているケース・避けたほうがよいケース
CAD/CAM冠が比較的向いているケース(条件付き)
- 噛む力がそれほど強くない小臼歯など
- 金属アレルギーで、どうしても保険診療内で金属を減らしたい
- 「とりあえず保険で白くしておき、将来ジルコニアなどにやり替える」前提で考える
避けたほうがよい・慎重に考えたいケース
- 歯ぎしり・食いしばりが強い(トラブルが非常に多い)
- 奥歯の大臼歯で、噛み合わせの負担が大きい
- お口の中の多くの歯を一度にCAD/CAM冠にするケース
- すでに何本も割れているのに、さらにCAD/CAM冠を増やそうとしているケース
こういった場合は、ジルコニアクラウンやe.max、あるいは従来の金属冠も含めて、
「どこにコストをかけるべきか」
を一緒に考える必要があります。
CAD/CAM冠 vs ジルコニア・e.max・金属冠
| 素材 | 見た目 | 強度・耐久性 | 保険適応 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| CAD/CAM冠 | 白い・ややマット | 中〜やや弱い(破折・摩耗・変色) | 条件付きで保険 | 「保険で白く」はできるが、長期使用には限界。強い力には不向き。 |
| ジルコニア | 白い・審美性はランクで変わる | 非常に強い・摩耗に強い | 自費 | 奥歯の強度・耐久性を重視する場合に有力な選択肢。歯ぎしりにも比較的強い。 |
| e.max(セラミック) | 透明感があり審美性が高い | 十分な強度はあるがジルコニアよりやや劣る | 自費 | 見た目を重視しつつ、奥歯では症例を選ぶ必要あり。インレーが主な適応。 |
| 金属冠(金銀パラジウムなど) | 銀色(見た目は目立つ) | 強度・耐久性は良好 | 多くの部位で保険 | 見た目以外は機能的に優れることが多い。金属アレルギーがあれば注意。 |
すでにCAD/CAM冠が割れた・外れた方へ
「キャドカム冠が次々に壊れてきた」
「何度も付け直している」
という方の相談も多くあります。
まず確認したいポイント
- どの部位のCAD/CAM冠が、何本くらい入っているか
- 歯ぎしりや食いしばりの有無・程度
- 土台が金属かどうか(メタルコアかファイバーか)
- 虫歯や歯周病の治療は適切に行われているか
考えられる対応の一例
- 噛む力が強い部位・奥歯:ジルコニアクラウンへの変更を検討
- 審美性を特に重視する部位:e.maxやジルコニアを組み合わせる
- 金属アレルギーがある場合:メタルフリー(ジルコニア+e.max)での全体計画
- 歯ぎしりが強い場合:ナイトガード(マウスピース)で歯と被せ物を守る
一度崩れ始めると「ドミノ倒し」のように次々と壊れていくことがありますので、
早めに全体を見直し、「どこを優先的に守るか」を決めることが大切です。
CAD/CAM冠に関する関連ページ・症例解説(北村歯科)
- CAD/CAM冠 キャドカム冠はなるべく避けるべき 仮歯と考える素材
- cad/cam冠が破損して割れた と来院事例を掘り下げる
- 割れた,外れたと問題の多いキャドカム冠とジルコニアを比較しました。
- CAD/CAM冠が割れた。e.maxで修復 キャドカム冠 イーマックス セラミックインレー
- 健康保険のCAD/CAM冠をやっていない理由(たまには業界の困ったお話)
- 金属アレルギー 保険のプラスチックで修復したけど(CAD/CAM冠がダメな理由)
- ジルコニア治療を検討中の方へ|総まとめガイド
- 金属アレルギーと歯科治療の総まとめ|鶴見 北村歯科
- 歯ぎしり・食いしばり・かみしめの総まとめ ナイトガードと歯の守り方
CAD/CAM冠に関するよくある質問
Q1. CAD/CAM冠は「悪い素材」なのですか?
A. 一概に「悪い」とは言えませんが、材質の限界を理解せずに何本も入れてしまうとトラブルが増えやすい素材だと考えています。
条件を選んで使えば役割はありますが、「長期間の最終ゴール」としては慎重に判断する必要があります。
Q2. 保険で白くできるなら、全部CAD/CAM冠にしたほうが得では?
A. 短期的には「白い歯が安くそろう」ように見えますが、
強度不足や摩耗・破折などでやり直しを繰り返すと、結果的に歯そのものの寿命を縮めるリスクがあります。
「どこは保険で、どこは自費で守るか」を分けて考えることが大切です。
Q3. 金属アレルギーなのですが、CAD/CAM冠しか選択肢はありませんか?
A. 保険診療の中ではCAD/CAM冠やレジンが中心になりますが、
自由診療を含めるとジルコニアやe.maxなど金属を使わない選択肢もあります。
予算の制約もありますので、どの歯にどの素材を使うかを一緒に考えます。
Q4. すでに何本もCAD/CAM冠が入っています。全部やり直すべきですか?
A. すぐに全部やり直す必要があるとは限りません。
まずはどの歯が壊れやすいか・どこに負担が集中しているかを診査し、
特に負担の大きい部位から、ジルコニアなどへの変更を優先することが多いです。
Q5. CAD/CAM冠の上からナイトガードを使えば持ちますか?
A. 歯ぎしり・食いしばりがある方には、ナイトガードはとても有効な防御策です。
ただし、それでも材質の限界はありますので、「どこは素材自体を変えるか」と組み合わせて考える必要があります。
Q6. まずは相談だけでもいいですか?
A. もちろん大丈夫です。
すでに入っているCAD/CAM冠の状態を確認し、残せるもの/変えたほうが良いものを整理したうえで、
無理のない範囲での治療計画をご提案します。





