CAD/CAM冠(キャドカム冠) FAQ50|保険の白い歯のメリットと限界|鶴見 北村歯科

CAD/CAM冠(キャドカム冠)は、

保険でできる白い被せ物として広く使われるようになりましたが、
「よく割れる」「欠ける」「外れる」といったご相談も少なくありません。

ここでは、北村歯科によく寄せられるご質問を50問にまとめました。

実際の診療では、お口の状態を拝見したうえで、

CAD/CAM冠を使うべきか・使わないほうがよいかを個別に判断していきます。

※以下は一般的な目安です。実際の適応や治療方法は診察のうえで決定します。

 

【基本・材料について】CAD/CAM冠とは何か

Q1. CAD/CAM冠(キャドカム冠)とは何ですか?

A. CAD/CAM冠は、レジン(プラスチック)にセラミックの粉を混ぜたブロックを、コンピューター制御で削り出して作る被せ物です。保険で白い歯を入れられる材料のひとつですが、強度や耐久性には限界があります。

Q2. セラミッククラウンとは何が違うのですか?

A. 一般的なセラミッククラウン(ジルコニア・e.maxなど)はほぼセラミックだけでできており、硬さや耐久性、色調再現性がCAD/CAM冠より高いのが普通です。CAD/CAM冠はレジン主体のハイブリッド素材なので、どうしても割れやすさ・すり減りやすさが出てきます。

Q3. 見た目はきれいですか?

A. 金属冠と比べれば白く見えますが、ジルコニアやe.maxほどの透明感・ツヤはありません。奥歯の「とりあえず銀歯を白くしたい」という目的には合いますが、前歯の審美治療としては物足りないことが多いです。

Q4. 材質は身体に安全ですか?

A. 保険材料として認可されていますので、基本的には安全性は確認されています。ただしレジン系材料なので、長期間口の中にあると水分を吸って変色したり、表面性状が変化してきます。金属アレルギーの方にはメリットがありますが、万能ではありません。

Q5. なぜ「CAD/CAM」と呼ばれるのですか?

A. コンピューターで設計(CAD)し、機械で削り出して製作(CAM)する工程を使っているためです。材料の問題と、作り方の問題は別の話ですが、まとめて「CAD/CAM冠」と呼ばれています。

Q6. 仮歯とは違うのですか?

A. 保険上は「最終的な被せ物」として扱われますが、

材質としては強度が低く、長期安定という意味では『仮歯に毛が生えた程度』

という評価をする先生も少なくありません

特に噛み合わせが強いところでは、最終補綴としてはかなり無理があります。

Q7. 色は選べますか?

A. ある程度の色調は選べますが、自由診療のセラミックのように

細かな色・透明感・グラデーション

までこだわることは難しいです。標準的な色から近いものを選ぶ形になります。

Q8. 金属アレルギーには良い材料ですか?

A. 金属を使わないので、金属アレルギーの観点からはプラスです。

ただし、長期的な耐久性という意味では弱点も多いため、

「金属アレルギーだからCAD/CAM冠一択」というわけではありません。

Q9. プラスチックの歯と考えてよいですか?

A. イメージとしてはその通りで、強化されたプラスチックの白い歯と考えると近いです。

セラミックとは根本的に性質が違います。

Q10. 全部の歯をCAD/CAM冠にするのはどうですか?

A. お勧めしません。
一時的には「すべて白く見える」かもしれませんが、

数年以内に次々と割れたり、すり減ったり、外れたり

するリスクが非常に高くなります。

結果的に、歯そのものの寿命を縮める可能性があります。

 

【保険適用・適応範囲】どの歯に使えるか

Q11. CAD/CAM冠は保険でできますか?

A. 一定の条件を満たせば、保険診療の対象になります。ただし、「どの歯でも」「誰でも」というわけではなく、部位や噛み合わせ、歯の状態などに条件があります。

Q12. 前歯にもCAD/CAM冠は使えますか?

A. 保険制度の変更により、条件付きで前歯に使えるケースもありますが、

審美性・耐久性の観点からは慎重な検討が必要です。

前歯は見た目と繊細な噛み合わせが重要になるため、

ジルコニア・e.maxなども含めて検討します。

Q13. 奥歯(大臼歯)でも保険でできますか?

A. 条件付きで可能な部位もありますが、強い噛む力がかかる場所なので、

CAD/CAM冠では破損・脱離リスクが高くなりがちです。

特に歯ぎしりが強い方には慎重な判断が必要です。

Q14. 金属アレルギーの診断があれば適応範囲が広がりますか?

A. 保険制度上、金属アレルギーがある場合にCAD/CAM冠の適応範囲が広がるルール

があります。

ただし、材料の限界が消えるわけではないので、「どこまでCAD/CAMで行くか」「どこから自由診療にするか」を分けて考える必要があります。

Q15. 保険のルールを無視して、自費でCAD/CAM冠を入れてもらえますか?

A. 基本的に、CAD/CAM冠自体は保険材料として設計されたものであり、

自費で入れるメリットはほとんどありません。

自由診療であれば、より性能の高いジルコニア・e.maxなどを選んだほうが合理的です。

Q16. ブリッジにもCAD/CAM冠は使えますか?

A. 一部の条件付きで認められている場合もありますが、

複数の歯に力がかかるブリッジでCAD/CAMを多用することには大きな注意が必要です。

全体の設計を含めて慎重に検討します。

Q17. 1本だけCAD/CAM冠にするのと、何本も連続して入れるのは違いますか?

A. 1本だけであればまだ持つケースもありますが、

連続して何本もCAD/CAM冠が入っていると、全体が一気に崩れ始める

ケースが目立ちます。噛み合わせの力を受け止めきれないためです。

Q18. 「銀歯かCAD/CAM冠か」と言われました。どちらが良いですか?

A. 見た目を優先するならCAD/CAM冠、

強度と耐久性だけを見るなら金属冠という傾向があります。

金属アレルギーや噛み合わせ、

長期的な計画を含めて総合的に判断する必要があります。

 

【トラブル・耐久性】割れる・外れる・すり減る理由

Q19. なぜCAD/CAM冠は割れやすいと言われるのですか?

A. レジン主体の材料で、金属やジルコニアほどの強度がないためです。歯ぎしりや強い噛み合わせの力がかかると、破折や欠けが起こりやすくなります。

Q20. どのくらいの期間もてば「平均的」ですか?

A. 個人差が大きく一概には言えませんが、数年以内に破損・脱離・摩耗の問題が出てくる方も珍しくありません。10年以上トラブルなく持つケースもありますが、全体から見れば少数派です。

Q21. 入れて半年もしないうちに割れました。普通ですか?

A. 正常とは言えませんが、珍しいトラブルではないというのが正直なところです。噛み合わせ・歯ぎしり・支台歯の形・接着方法など、いくつかの要因が重なっていることが多いです。

Q22. CAD/CAM冠が外れてしまいました。再装着して使えますか?

A. 再装着が可能な場合もありますが、何度も外れている場合や、冠の内面・歯の削り方に問題がある場合は、別の材料に変更したほうが良いこともあります。状態を確認したうえで判断します。

Q23. 歯ぎしりが強いと、やはりCAD/CAM冠は向きませんか?

A. はっきり言うと向きません
歯ぎしり・食いしばりが強い方では、CAD/CAM冠が短期間で破損・脱離するケースが多く、やり直しを繰り返すうちに歯そのものがダメになってしまうことがあります。

Q24. 表面がすり減ってきた気がします。

A. レジン系材料のため、咬耗(すり減り)や摩耗はどうしても起こります。噛み合わせの高さが変化し、全体のバランスが崩れることもあるため、定期的なチェックが重要です。

Q25. 変色してきたのですが、歯みがきで何とかなりますか?

A. 表面の汚れであればクリーニングである程度改善しますが、

材質そのものが変色している場合は元通りには戻りません。

その場合は作り直しを検討します。

Q26. CAD/CAM冠の下で虫歯になりやすいですか?

A. CAD/CAM冠に限った話ではありませんが、

適合が悪い・段差や隙間がある・歯磨きが難しい形態

になっていると、虫歯のリスクは上がります。形と適合が重要です。

Q27. 「割れにくく改良されたCAD/CAM冠」と言われました。本当ですか?

A. 材料メーカー側で改良が続けられていますが、

根本的にレジン主体であることは変わりません

過度な期待をせず、「どこに使うか」が重要です。

Q28. ナイトガードをすればCAD/CAM冠も長持ちしますか?

A. 歯ぎしりの強い方にはナイトガードは非常に有効ですが、

それでも材料の限界は完全には消えません

奥歯のCAD/CAM冠をどうするかは、ナイトガードと併せて検討します。

 

【他素材との比較・選び方】ジルコニア・e.max・金属冠との違い

Q29. CAD/CAM冠とジルコニア、どちらが良いですか?

A. 単純な強度・耐久性だけを見るなら、ほとんどの場合ジルコニアが勝ちます。

費用はジルコニアのほうが高くなりますが、

「何度もやり直すコスト」「歯へのダメージ」を考えると、

長期的にはジルコニアのほうが有利なことが多いです。

Q30. CAD/CAM冠とe.maxの違いは?

A. e.maxはガラスセラミック系の材料で、透明感や審美性に優れます。

CAD/CAM冠より硬く、色の再現性も高いですが、

ジルコニアよりは硬さが劣るため、症例を選ぶ必要があります。

Q31. CAD/CAM冠と金属冠、どちらが長持ちしますか?

A. 見た目を除けば、金属冠のほうがトラブルが少ないという印象です。

特に奥歯では、強度と耐久性の点で金属冠のほうが優れているケースが多いです。

Q32. 「奥歯はジルコニア、手前はe.max」など、素材を分ける意味はありますか?

A. とても意味があります。
奥歯は強度優先(ジルコニア)

前歯〜小臼歯は審美性(e.maxやジルコニアの上位グレード)

というように、部位ごとに素材を使い分けるのが合理的です。

Q33. いきなり全部ジルコニアにするのは難しいです。どう選べばよいですか?

A. 「どの歯を優先して守るべきか」を一緒に考えます。
例えば、特に負担がかかる奥歯だけはジルコニアにして、

他は経過を見ながら順次やり替えていくなど、段階的なプランもよく行われます。

Q34. 審美性だけ見れば、CAD/CAM冠でも十分では?

A. 短期的に「銀歯より白い」という意味では十分かもしれませんが、
数年経った状態まで含めて審美性と言うなら、CAD/CAM冠は不利です。

変色・すり減り・欠けが見た目に大きく影響します。

Q35. 「保険でここまで白くなるなら、ジルコニアは不要では?」と思ってしまいます。

A. そう見える時期もありますが、本当の差は「数年〜10年単位」で現れます
どのくらいの期間を想定して治療するかによって、選ぶ材料は変わってきます。

Q36. 将来的にはジルコニアにしたい場合、最初からCAD/CAM冠は避けるべきですか?

A. ケースによります。
「数年だけ保険でCAD/CAM冠にしておき、落ち着いたらジルコニアに変更する」

という考え方もありますが、

その間に歯が割れたり、根がダメになるリスクもあることを知っておく必要があります。

 

【すでに入っているCAD/CAM冠】壊れた・不安な方へ

Q37. 他院でCAD/CAM冠をたくさん入れましたが、不安になってきました。

A. すぐに全部やり直す必要があるとは限りません。
まずはどの歯が問題を起こしやすいか・どこに力が集中しているか

を診査し、優先順位をつけて治療計画を立てていきます。

Q38. 今のところ問題はありませんが、将来が心配です。

A. 定期的なチェックで、早期にトラブルのサイン(ひび・欠け・適合不良など)

を見つけることが大切です。

全体の噛み合わせ・歯ぎしりの有無も含めて見ていきます。

Q39. 1本だけ割れた場合、その1本だけジルコニアに変えればよいですか?

A. 状況によりますが、最も負担がかかっている部分からジルコニアに変更するのはよくある選択です。周囲のCAD/CAM冠の状態も合わせて評価します。

Q40. CAD/CAM冠が連続して入っているところだけ、先に変えたほうが良いですか?

A. はい、そのようなケースは「崩壊ゾーン」になりやすいので、

優先的に検討する価値があります。
特に奥歯の連続CAD/CAM冠は、

ジルコニアなどへの変更を強く検討することが多いです。

Q41. 一度CAD/CAM冠が割れた歯に、もう一度CAD/CAM冠を被せても大丈夫ですか?

A. 原則として同じ失敗を繰り返す可能性が高いです。
噛み合わせや歯ぎしり、支台の形態を見直したうえで、

別の材料に変更することをお勧めする場合が多いです。

Q42. CAD/CAM冠の中の土台が金属(メタルコア)なのですが、問題ですか?

A. 金属の土台は硬く、歯根や被せ物に負担がかかりやすいと言われています。
場合によってはファイバーコアにやり替えたうえで、

ジルコニアなどに変更したほうが長期的に有利なこともあります。

Q43. 何度も付け直しているCAD/CAM冠があります。

A. 同じところが何度も外れる場合、

材料の問題だけでなく、歯の形や噛み合わせ、接着処理

に問題があることが多いです。根本的な見直しが必要かもしれません。

Q44. 一気にすべてやり直すのは金銭的に難しいです。

A. その場合は、

「今後10年で特に大事にしたい歯」から優先順位をつけて治療していくことが多いです。
分割して計画を立てることで、無理のない範囲で改善していくことができます。

【費用・通院・その他】よくある疑問

Q45. CAD/CAM冠は金属冠より高いのですか?

A. 同じ保険診療でも、材料や技術料の違いにより、

患者さんの自己負担額に差が出ることがあります

。詳細は実際の保険点数に基づいてご説明します。

Q46. 将来的にジルコニアに変えるつもりなら、今はCAD/CAM冠で良いでしょうか?

A. 「一時的な選択」としてCAD/CAM冠を使う考え方もありますが、
その間に歯が割れたり、根がダメになるリスクもあることを理解しておく必要があります。
どこまで妥協し、どこに投資するかを一緒に考えます。

Q47. 治療回数は金属冠と変わりますか?

A. 基本的な流れ(削る→型取り→装着)は大きく変わりませんが、
CAD/CAM冠を作る工程上の違いで、通院回数や間隔が変わることはあります。

具体的な回数は診療時にお伝えします。

Q48. CAD/CAM冠を入れたあと、特別なメンテナンスは必要ですか?

A. 特別なケアというより、定期的な検診とクリーニングが非常に大切です。
早期にひび・欠け・適合不良などを見つけることで、

被害を最小限に抑えられる可能性があります。

Q49. 「先生はCAD/CAM冠をやっていない」と書いているページも見ました。

A. 材料の性質やトラブルの多さから、あえてCAD/CAM冠を扱わない先生もいます。
北村歯科では、CAD/CAM冠の問題点を踏まえたうえで、

「どこまで保険で行くか」「どこから自費で守るか」という考え方を重視しています。

Q50. まずは相談だけでも良いですか?

A. もちろんです。
すでに入っているCAD/CAM冠の状態や噛み合わせを確認し、
今すぐ対処が必要なところ/様子を見てよいところを整理したうえで、治療計画をご提案します。無理に自費治療を勧めることはありません。

この記事の執筆・監修:
北村秀紀(歯科医師)/横浜市鶴見区 北村歯科

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